「人工知能は、人類の仕事を簡単にうばえるほど有能ではない」 京大教授がAI万能説を斬る!
『アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか』より紹介
◆「私の仕事」がいつか人工知能にうばわれる未来はくるのか?
アルファ碁が人間に勝ったり、自動運転車が施行されたりと、人工知能が活躍するなかで生まれてきた、人工知能万能説。ところが、人工知能が奪えるほど、人間の仕事は単純なものではない、と京大の齊藤康己教授は語る。ベスト新書『アルファ碁はなぜ人間に勝てたのか』より紹介しよう。
多分、今一番みなさんが気にしているのは、「私の仕事」が奪われるかどうかということかもしれません。あなたの仕事は、単調ですか? 計算機にもできそうですか?
世の中で良く言われているのは、「マニュアルがしっかり書かれていてそれにのっとって進めれば良い仕事」はAIやロボットに奪われるだろうというものです。しかし、話はそんなに単純ではないと思います。私は、その仕事が他の人とのやりとり(インタラクション)をどれぐらい含んでいるか、つまり人間相手の仕事かそうでないかがまず大きな分かれ道になると思っています。人間相手の仕事、具体的には教育、医療、介護、接客、営業などの分野はなかなか機械やロボットでは置き換えられないと思います。
では、人間ではなくて物を相手にする仕事はどうでしょうか? 物を相手にした単純な作業はすでに多くの工場などで機械に置き換えられています。そのほうが効率もよく、間違いも少ないからです。もうすこし複雑な「物を相手にした仕事」、例えば工事現場の肉体労働とかはどうでしょうか? 「スコップで穴を掘る」というような動作は典型的な単純肉体労働だと思われていますが、そんなに簡単なことでしょうか。
どんな場所でも目的に合致した適当なサイズの穴をうまく掘ってくれるロボットというのはそれだけで案外チャレンジングな課題だと思われます。スコップという人間向けに作られた道具を使いこなす部分がまずは大きな課題でしょう。スコップをやめてぐるぐる回るドリルのようなものにすればうまくいくでしょうか? 少し思考実験をしてみてください。
また、穴掘りロボットは、人間の現場監督からの言葉による指示通りに作業をしなければならないということも見逃されがちなポイントです。
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